武者利光 編著
北原和夫・山本光璋・小杉幸夫・後藤慶一・諫早俊夫 共著
1993年6月 刊行(森北出版)
ゆらぎ現象研究会の世話人と森北出版の吉松さんの計らいで、「ゆらぎの科学3」は私の定年退官記念講演会の内容をあてることになりました。
私が東京工業大学に勤めてから、早いものでもう25年も経ってしまいました。自分の歳を数えてみると60歳です。 東京工大は60歳が定年ですから、研究の都合がどうあろうと退職しなければなりません。 考えてみるとこれは大変に奇妙な制度ですが、後輩に道を譲るという意味があるのでやむを得ません。
ゆらぎ現象研究会の企画を山本光璋先生(東北大学)と佐藤俊輔先生(大阪大学)と相談している時に、私の定年退官を記念して講演会を開いてそれを第5回の研究会にしたらどうであろうかということになりました。 私にとっては大変に有り難いことで、この機会に「1/f ゆらぎ」の研究についての自分の足どりについてお話をしようと考えました。 そして関係の方の中から何人かの方にもご講演をお願いしようと考えました。
物理現象としての「1/f ゆらぎ」の本質は非線形相互作用をする多体系の中でのエネルギー緩和に関係しているに違いないというのが私のアイデアで、これを理論的に説明するために北原和夫先生と1年以上にわたって、ああでもないこうでもないと議論をしてきましたので、北原先生にお話をお願いしました。 山本光璋先生とは生体の「1/f ゆらぎ」についてご一緒に永いこと研究を続けてきましたし、最近はドイツのGrueneisさんも入れてclustering poison processという観点からネコの脳内の1/f 型のパルス列の解析について考えてきました。
生体の「1/f ゆらぎ」研究のそもそもの発端は1970年代後半の、当時は池辺潤先生の助手であった小杉幸夫先生との「やりいか」の研究だったのです。 1977年に東京で初めて開催された「1/f ゆらぎに関する国際シンポジウム」は、福与人八先生、川久保達之先生、大浦宣徳先生、関根松夫先生、小杉幸夫先生、寺町康昌先生などのご協力で実現しましたが、そのときに音楽のメロディーが「1/f ゆらぎ」をするという発表がありました。 そのあとで私の研究室でもその追試を行いました。 そのころ研究室で自然音採取を兼ねたハイキングを行ったときに小杉幸夫先生がいろいろな音を録音して下さったのです。 後藤慶一さんとのおつきあいは、冨田勲さんとの対談以来です。 その後ご一緒に 「1/f ゆらぎ音楽工房」を結成して作曲を行ってきました。
2枚のCDがその成果です。 その過程で後藤さんからは音楽についていろいろなことを教わりました。 今から8年くらい前になりましょうか。 NHKの教育テレビで「パソコン講座」を半年放送したときに、私達が作った曲を演奏していただいたのが諫早俊夫さんです。 それが縁になって放送大学でも別の曲の演奏をしていただいたり、東京工大で諫早さんご夫妻にギターの演奏とオシャベリの会をしていただきました。
もちろん、このほかにたくさんの方々のお世話になりましたが、これ以上の方にご登場願うわけにはまいりませんし、あまり堅い話が続いてもと考えて、このような企画になりました。 翻ってみますと、いろいろな分野の方から知恵を頂いてきたことがよくわかります。 そして研究そのものが随分とゆらいできたものです。 自己勝手満足という面がありますが、楽しみながら研究ができたという点では満足をしています。
1993年5月 武者利光
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